その後、恐竜に子供の頃のような興味を失って、そのままになっていたのだが、つい10年ほど前、真実が科学的にほぼ立証されていたことを知った。
白亜紀の地層の上に、化石を全く含まない薄い地層(KT境界層)がある。世界各地において、KT境界層の中にイリジウムという元素が地球上で想定される濃度の数10倍から100倍という異常な高濃度で含まれることが報告された。
これは、このKT境界層が、地球上ではありえない理由により作られたことを示唆する。そこであるアメリカの研究者(アルバレス親子)は、KT境界層が隕石衝突によって作られたと仮定して、隕石の大きさ、気象に与える影響などを試算した。1980年のことである。
当初彼らの説はおおむね冷淡に受け取られたようであるが、アルバレス論文がScience誌に出てからほぼ10年後、メキシコのユカタン半島に、その巨大隕石のクレーターが発見される。磁気異常・重力異常、その他あらゆる地球物理学的・地層学的知見に照らして、文句のつけようがなかった。
驚くべきことに、隕石衝突説は本当だったのだ。
子供の頃の想像の世界に、科学色の道しるべを付け直してくれる好著。
(本稿初出 2007/01/21、一部改訂。)
★★★★★ 巨大隕石の衝突―地球大異変の歴史を読み解く
- 松井孝典
- PHP新書
- 1997
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