2009年9月29日火曜日

「大東亜会議の真実 アジアの解放と独立を目指して」



日本人が近現代史を総括できる時が来るとしたら、この本は、きわめて重要なテキストとなろう。理想主義としての大東亜共栄圏。東アジアの独立運動の志士たち。東条英機の能吏としての美点と、非ステーツマンとしての限界。時によりさまざまな角度で交差するこれらの軸に、著者自身の子供時代に体験したエピソードが絡められ、大東亜会議という華々しいエピソードが、事実の通りに華々しい出来事として活写されていく。本当に面白い。

記号として大東亜、と聞くと右翼的な印象で捉える人が多かろうが、字義通りに取れば大いなる東アジア、そこに共栄圏を打ち立てようという話であり、白人帝国主義がグローバルスタンダードであった当時には、むしろ美しい理想主義をそこに感ぜずにはいられない。

この種の本では、「戦争は絶対やってはいけない」のような、現実的な力を何も持たぬ思考停止を恥じるところなく出発点にする手合いが非常に多い。戦争が避けるべきものであることは誰でもわかっている。では、たとえば、金正日にミサイルで脅されて、たとえば九州割譲とか数兆円規模のODAとかを要求されたらわれわれはどうすべきだろう。独裁者に跪き、奴隷の平和を求めるべきなのだろうか。

現代よりもはるかに過酷な帝国主義の時代に、戦争反対、などというお題目は意味を持たなかった。大東亜共栄圏という理想主義の後ろに、大日本帝国の武力的威光があったのはむしろ当然である。

著者は後付けでわれわれが刷り込まれた一切から自由に、個々のエピソードを綴っている。あたかも書くこと自体が楽しみであるかのようであり、読んでいる側もぐいぐい引き込まれる。戦争時代を描いた歴史書としては出色の出来である。万人に勧めたい。

★★★★★ 大東亜会議の真実 アジアの解放と独立を目指して
  • 深田祐介
  • PHP新書
  • 2004

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