2009年11月14日土曜日

「虚構―堀江と私とライブドア」



久々に、絵に描いたような小人物の本を読んで、不愉快を通り越してむしろ爽快である。

宮内氏と堀江氏、双方の本を読み比べた結論は、堀江=稀有の大物、宮内=よくいる小物、というもので、一連の騒動も、邪悪な何かが暴かれたというよりは、「出る杭が打たれた」というただそれだけの話に過ぎないように思える。

経済活動は多彩であり、そのすべてを事前に法で予測し規制することはできない。多くの場合に違法か合法かわからない領域が存在し、そういう領域では法の専門家の主観的解釈だけが頼りである。しかしその解釈は通常一通りには決まらない。だからこそ、いつもは庶民をご指導下さっているマスメディアの皆さんも、時折摘発を受けたりするわけだ。
カラ出張、経費水増し 朝日新聞社が4億円所得隠し 
産経ニュース 2009.2.23 19:19
朝日新聞社(東京都中央区)が東京国税局の税務調査を受け、出張費や取材費の過大計上があったとして平成20年3月期までの7年間で、計約4億円の所得隠しを指摘されていたことが23日、分かった。記者がカラ出張などで経費を水増し請求していた。同社が明らかにした。

読売新聞が1億円所得隠し 社員同士の飲食、経費計上
産経ニュース 2009.5.31 12:03
読売新聞東京本社が、東京国税局の税務調査を受け、平成20年3月期までの7年間に約1億円の所得隠しを指摘されていたことが31日、分かった。取材費の一部が社員同士の飲食費だったと指摘されたとみられる。
宮内氏は横浜商卒の有能な税理士で、ライブドアでは堀江氏の側近としてファイナンス部門を任され、かなりの収益を上げていたようだ。本人は、ライブドアは堀江の会社だと繰り返すが、ファイナンス部門の業績を語る口は饒舌で、まるで自分がライブドアの利益のほとんどを上げていたかのようだ。また、堀江氏と異なり、自分はつつましい報酬で堀江に使えてきたといわんばかりだが、実は自分でも相当不明瞭な株取引で莫大な利益を上げ、フェラーリを購入したりしている(p.122)。

率直に言って、本書を通して、首尾一貫性にまったく欠ける印象を与えるのは否めない。本人は自分が堀江のように「天才」でない自覚があったのだろう。そうしてNo.2の地位でうまく会社を回してきた。しかし逮捕されてみればいまや自分の上にあるのは、堀江ではなくて、検察である。すばやく取り入る相手を変え、堀江との対決を選んだのだろう。そういう意地悪な見方をされても仕方ない気がした。

価値の軸が確立していない輩。このような輩は世の中にはたくさんいて、国家とか会社とかそういう枠が磐石なうちはその中で力を発揮する。価値の軸を確立することに力を注いでいないので、投入するエネルギーの有効活用という意味ではむしろ有利だったりする。しかし、いざその枠が壊れると、このように醜態を晒す。幸いそのような人物を見抜く目は持っているつもりだが、そういう人たちの中で生きるのはまったく疲れることではある。

★★☆☆☆ 虚構―堀江と私とライブドア (単行本)
  • 宮内 亮治 (著)
  • 単行本: 248ページ
  • 出版社: 講談社 (2007/03)
  • 発売日: 2007/03

0 件のコメント:

コメントを投稿