2009年11月14日土曜日

「徹底抗戦」


言わずと知れたホリエモンの書き下ろし。かつての片腕で、今は敵対関係にある宮内氏の『虚構』とあわせて読むと当事者たちの主張がよくわかる。前に書いたように、私の結論としては、堀江=大物、宮内=小物、というものだ。

あれほどマスメディアで話題になったのに、彼の容疑事実について具体的に言える人はほとんどいないのではないだろうか。彼が罪に問われた内容は下記の二つである。(p.138)
  • 偽計および風説の流布
    • ライブドアファイナンス社員によるマネーライフ社の過大評価と、それに基づいたライブドアマーケティング社との株式交換
    • 上記株式交換比率を第3者機関が決めたとの虚偽内容の公表
    • ライブドアマーケティング社の決算内容についての虚偽事実の公表
  • 有価証券報告書虚偽記載
    • 実質赤字だったライブドアを、架空売り上げ計上などを通して黒字として報告したこと
起訴事実を羅列したこれらの項目のうち、素人から見ても明確に違法だろうと思うのは、一部の株の架空取引だけで、あとは「そう解釈すればそうなるかもしれない」という程度の違法性で、それがまかり通ればおそらく経済活動のほとんどは違法になるのではないか。しかもその架空取引をやったのが『虚構』の宮内氏である。宮内本はまさに語るに落ちるという感じであり、宮内氏は、私利私欲のためか、「天才」堀江氏への対抗意識ないし嫉妬のためか、堀江氏を通さずに大きな金を動かせる仕組みを巧妙に構築していた。その責任を取れといわれても堀江氏は困惑するだけだろう。

堀江氏にはよって立つ価値観があり、それは95日間権力に拘束され自由を奪われても変わることはなかった。

罪に問われた経済犯罪の内容については微妙な点もあるのでこれ以上コメントしないが、日本のエスタブリッシュメントのトラの尾を踏んだ、という本人の分析はおそらく正しい。相手が悪かった。日本テレビの日枝会長は、『メディアの支配者』で描かれているところでは、おぞましい社内政治をクーデター的に勝ち抜いてのし上がってきた猛者だ。一方堀江氏は、大衆メディアを力と信じ、日々情報発信を続ける。大衆の王と密室の王。その争いは見ものではあったのだが、やはり青年将校と老獪な大臣では格が違いすぎたといったところだろう。

ライブドア事件に関しては、当事者たるマスメディアの報道のほとんどは信用できない。知識のバランスを取るための必読文献。


★★★★★ 徹底抗戦
  • 堀江 貴文 (著)
  • 単行本(ソフトカバー): 232ページ
  • 出版社: 集英社 (2009/3/5)
  • 発売日: 2009/3/5

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