2009年10月2日金曜日

「壊れた尾翼―日航ジャンボ機墜落の真実」

著者は航空力学の権威。科学的に説得力のある議論が展開されており、陰謀論者の主観的かつ恣意的なストーリーを一蹴する力強い内容。本書を読めば、日航機事故の原因がほぼ理解される。

急減圧があればそれは加速度計に反映される。そしてその減圧の速度は機体容積に大きく依存する。これらは明白な科学的事実であり、反論の余地がない。ただ、この点を理解するには力学についてのある程度の知識が必要。多くの陰謀論者はそうではないので、話は永遠にかみ合わないのかもしれない。

基本的に非常に優れた労作だと思うのだが、文中何度も出てくる江連という記者が、実は美人の女性記者であることが一番最後に明かされ、そこで一気に読者は白けてしまう。女の尻を追いかける色ボケ老人の話だったのか、と。話の本筋にこの女性記者の存在は一切不要だ。著者はプロの文筆業者ではないから仕方ないにしても、このようなバカバカしいストーリーにした編集者の力量を疑わざるを得ない。まったく惜しい。

しかしそれを差し引いても、日航機事故についての、保存の価値ある資料である。将来の全面的書き直しを期待する。
(本稿初出 2005/11/13)

★★★★☆ 壊れた尾翼―日航ジャンボ機墜落の真実
  • 加藤寛一郎
  • 講談社プラスアルファ文庫
  • 2004

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