まず著者は、社会という場で行動するには、ゲームのルールとでも言うべきものがあると説く。だから、コギャルには「君は醜い」と言ってやるべきなのだと説く。それはしかし、すべての人間に愛あるゆえの、愛の罵倒とでも言うべきものだ。
ついで著者は、最近の日本社会での、価値観の貧困を指摘する。学歴勝者、スポーツ勝者、芸能界勝者、それだけの価値観では余りに貧困ではないかと。自分の能力の適性と限界をわきまえた穏やかな生活を送ることを目指せばいいでないかと。
そしてその感慨は、実は、社会にはゲームのルールがあるのだ、という冒頭の指摘と裏でつながっていることを読者は知る。すなわち、ルールを構成しているのは、一握りのスターではなくて、静かに生きている市井の人々なのだと。
そのような主題が、豊富かつ正確な医学的知識により裏打ちされる。かつて社会を根源から思考し切ることを目指し、そして挫折したたこの著者ならではの力強い筆の運びに、感銘を覚えた次第である。
(本稿初出 2004/9/26、一部修正。)
★★★★★ あなたの心が壊れるとき
- 高橋龍太郎
- 扶桑社文庫
- 2002
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