さすがに自分で保険会社を立ち上げただけあって、データが豊富だ。たとえば冒頭、小売業全体の売り上げは133兆円、生命保険料の総額は40兆円、外食代30兆円といったデータが紹介され、なんと我々は外食に使うお金の1.4倍ものお金を保険に費やしており、それどころか、あらゆる買い物に使うお金の1/3もの大金を保険金として支払っているという事実が明らかにされる。もちろんこれは先進諸国では突出して高い。保険に対するこの高い消費意欲こそ、MBA上がりの彼らが保険業界に目をつけた理由である。
本書は基本的に営業の書であるからして、いろいろな保険についての分かりやすい解説があり有用である。
- 定期保険
掛け捨てが基本。加入・更新時の年齢で保険料が決まる。 - 養老保険
多めに保険料を払い、満期が来たら積み立て分は利子をつけて返す - 終身保険
超長期の養老保険。一生加入する前提で、保険料は高めに設定される。
そして、キャッシュバック式の契約は無意味であること(p.95)、医療保険には入るのは不合理であること(p・103)など真っ当な事実が指摘される。趣旨は前に取り上げた「生命保険の『罠』」とほぼ同じである。興味深いことに、保険業界を攻撃しつつも、実は著者が現在保険業界で収入を得ているという構図も同じだ。
思うに、酒や煙草、それに自動車といったリスク要因を生活から排除し、バランスのよい食事に気を配っていれば、会社員でいう定年退職の年齢までに死ぬ確率は非常に小さい。そのため、ほとんどの保険は不合理であるように思われる。この不合理さこそ、岩瀬氏が既存の保険業界を攻撃してやまぬ理由である。一方で、その不合理さこそが高収益構造を生む源である。であるからして、本書を読んで彼らの会社の保険に入ろうと考えた人は、それは結局、ボられる割合がかなり大きいかやや大きいかの違いでしかないことをよく考えた方がよいかもしれない。
生命保険のカラクリ (文春新書)
- 岩瀬 大輔 (著)
- 新書: 232ページ
- 出版社: 文藝春秋 (2009/10/17)
- ISBN-10: 4166607235
- ISBN-13: 978-4166607235
- 発売日: 2009/10/17
- 商品の寸法: 17.4 x 11 x 1.6 cm
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