2011年7月31日日曜日

「制服概論」

負け犬の遠吠え』がうっかり社会的論争を引き起こしてしまったため、文化人のようにみなされかねない酒井順子女史の、本来の変態おちゃらけワールドが炸裂する好著。文化人キャラでないことは本人もよくわかっていて、最近のエロエッセイ群は「負け犬」四十路ならではの力の抜け方で、非常にいい味を出している。

基本、あけすけ・おちゃらけエンターテイメントなのだが、個人的には制服フェティシズムをめぐる三島由紀夫論が興味深い。三島の美意識のスコープは検定教科書に載るくらいな解毒された世界よりずっと広い。抑圧と解放、美と破壊、そういった文学的モチーフのひとつとして、「盾の会」における制服趣味や、その衝撃的な最期は当然位置づけられる。死は、自由の否定の究極形態である。しかし三島は、自由意志による選択の結果として討ち入りを行い、隊員に自由意志での参集を呼びかけ、意志を尊重するという点においてもっとも高貴な生の形態とも言える切腹という仕方で、自分の人生を終えたのだ。
制服人生を全うした、偉大なる制服愛好家(と勝手に断定してすみません)の先達、三島由紀夫。自分の軍隊の制服姿で討ち死にというそのあり方は、制服好きとしては究極の姿でありながら、他の制服好きには決して真似のできないもなのです。(p.141)  
おちゃらけた筆致のなかに、うっかり本来の芸術的指向を見せてしまった感じであるが、最近は、自分の知識を水増しして(結果として墓穴を掘る)悲しく必死な輩が多いから、こういう力の抜け具合は好感が持てる。

ま、三島だ文学だと高尚なことを一切考えなくても、作者のテンポのよいあけすけおちゃらけ節は十分楽しいので、疲れたときのお楽しみにどうぞということで。


制服概論 (文春文庫)
  • 酒井 順子 (著)
  • 文庫: 236ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2009/1/9)
  • ISBN-10: 4167228084
  • ISBN-13: 978-4167228088
  • 発売日: 2009/1/9
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.4 cm

0 件のコメント:

コメントを投稿