最近の大型液晶ディスプレイの価格下落はめざましい。これは主に量産効果によるものであろう。以前と異なり、家庭用テレビは液晶が主流になった。大型パネルのほとんどは、デジタル放送をそのまま(dot-by-dotで)表示できる1920×1080ドットのいわゆるフルHDという解像度を採用している。価格下落は、液晶ディスプレイの市場が、テレビ用という巨大な領域を得て爆発的に広がったためで、それは慶賀の至りなのだが、問題はこの16:9という横長サイズがPC上での作業といまひとつ相性がよくないことである。
研究なり事務処理などの実務において、A4サイズを画面上で読めるかどうかは本質的な違いである。これができないディスプレイだと紙による印刷が必須となり、プリンタを別途用意しなければならない。プリンタ自体は安くても、そのスペースや消耗品のコストをも考えれば、相当高くつくことは明らかである。つまりトータルで見て、エネルギー消費効率が悪い。したがって、A4を原寸大表示でき、なおかつそれと同等以上の作業スペースを確保できること。さらに願わくば、数十ワット以下の消費電力ですむこと。これはディスプレイに対する、エコな時代からの本質的な要請である。
本機の25.5インチ、1920×1200というスペックは、A3を原寸大表示するのに十分である。新鋭のLEDバックライト機には負けるが、最大52Wという消費電力は許容範囲である。しかも、2011年5月現在、実売最安値2万7000円程度と、驚くほど安い。スピーカーがついている点も、場所コストを考えればうれしい。
本機はかつては粗悪液晶の代名詞であったTN (Twisted Nematic) という方式の液晶を採用している。私を含め古いPCユーザーはTNに対して警戒心を抱いている場合が多い。実際、視野角についてのカタログスペックは高価なIPS液晶には劣っている。しかし、本機の視野角上下150度と、IPS液晶に典型的な178度というスペックとの違いが問題になる使い方など日常的にはほとんど想像すらできない。本機に関しても、たとえば5年前のディスプレイからの買い替えにおいて、見映えで落胆することはほとんどないだろう。実際、同じTN液晶で、本機よりも上下視野角が広いはずのレノボ ThinkVision L2440p Wideモニター をオフィスにて使っているのだが(詳細スペックはこちら)、このイーヤマよりも上下の視野角が狭いように感じる。だから、2万7000円という低価格に躊躇する理由はおそらくない。個人的にはよい買い物をしたと思った次第である。
読者の便宜のため、本機の特徴を羅列的に述べよう。
- スピーカー
- 背面についている。もちろん音質面ではオマケ的であるが、YouTubeを見る程度の用途には十分だろう。
- ケーブル
- DVI-Dケーブルが付属するが、シングルリンクのケーブルなので注意が必要である。たとえばPCのDisplayPort端子と接続する際は、DisplayPort-DIV変換コネクタに加えて、デュアルリンクのDVIケーブルが必要である。
- 端子位置がディスプレイの台と干渉しがちであるが、特に支障ない
- スイッチ類
- ディスプレイ縁の下部にあるので、ディスプレイを持ち上げるような格好でスイッチを入れる。これはやや押しにくいと思う人がいるかもしれないが、スイッチを押す際ディスプレイ位置がズレないという利点があり個人的にはベストな配置と思う。
- 複数入力を切り替える場合、切り替えに数秒待たされるので、できるだけ避けた方がいい。ディスプレイに比べて高価であるが、素直にPC切り替え器を買って、ディスプレイとキーボードを一系統に集約した方が作業効率がよかろう。
- 解像度
- 1920×1200なので、(PC以外の)1920×1080のフルHD機器をつなぐと、基本的に縦が引き伸ばされる。言い換えると、ディスプレイ自体にアスペクト保持機能はない(イーヤマのサイトに明記されているように、アスペクトが保持されるのは4:3と5:4の信号だけである)
- しかしPCとつなぐ限りにおいては、解像度の調整はPC側のビデオカードなりソフトウェアなりがやってくれるはずなので、たとえば地デジカード経由でテレビを見るのには支障はない
- PC以外の機器、たとえばDVDプレイヤーなどをつなぐ必要があり、ディスプレイ側でフルHDのアスペクト保持回路が必要なら、たとえば三菱電機のMDT243WGIIなどのマルチメディア対応機か、1920×1080のモニタを買うべし。
- モニタ台
- 水平軸の周りに、10度ほど画面の下部を前方に持ち上げられるが、それ以外は固定である。垂直軸まわりの回転はできない。したがって、他人に見せるためにディスプレイを回すなどの用途には向かない(別途ターンテーブルを買う必要がある)
- 若干足が高く、画面最下部まで10cmほどある。下向き目線でのディスプレイ配置が好みな人は目が疲れるかもしれない。
- 汎用のディスプレイアームが取り付けられるらしいが未確認。
- 寸法
- 画面自体の大きさは予想通りだが、ディスプレイ面の厚さがほぼ全面にわたって10cmほどあるのがやや盲点か。小型ディスプレイから買い換える人は、寸法図をよく見て配置に注意すべし。
- 熱
- 画面が熱くなることはなく、カタログスペックの、最大52Wというのは偽りなさそうである。一方、旧機のナナオ FlexScan L567は、カタログ上は消費電力45Wなのだが、本機よりも発熱が多い気がする。
iiyama 25.5インチワイド液晶ディスプレイPro Lite E2607WS
- メーカー型番 : PLE2607WS-B1
- カラー : ブラック
- 液晶サイズ : 25.5インチワイド
- 解像度 : 1920×1200
- 画素ピッチ : 0.2865×0.2865mm
- 表示範囲 : 550.14×343.8mm
- 輝度 : 300cd/m2
- コントラスト比 : 1000 : 1(通常) 4000 : 1(ACR時)
- 応答速度 : 2ms(G to G)
- 視野角 : 左右85°/上80°下70°
- 表示色 : 約1,670万色
- 入力端子 : HDMI、HDCP機能付DVI-D、ミニD-SUB15ピン
- スピーカー : 5W×2(アンプ付きステレオスピーカー)
- フリーマウント : VESA規格200(100mmピッチ)×100mm対応
- 電源 : 100V 50/60Hz
- 消費電力 : 最大52W(省電力モード時 : 2W以下)
- 外形寸法 : 597.5×460.5×238.0(幅×高×奥行き)
- 重量 : 8.3kg
- 適合規格 : VCCI-B
- 付属品 : D-SUBミニ15ピンケーブル、DVI-Dケーブル、電源コード、オーディオケーブル、取り扱い説明書、保証書
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