かつて私も衣類乾燥機付きのアパートに住んでいたことがあった。その時の感想は、これは生活の質の低下を我慢して使う機械だな、というものであった。乾燥機というのは要するにドライヤーを連続運転するようなもので、運転中は熱と湿気がすごい。とても夏は使えたものではない。関東では梅雨時でも苦しい。その上、靴下などは長さにして半分くらいに縮んでしまう。電気代も相当なものだ。基本、パジャマとか、家着とか、あるいはGパンみたいな傷みが気にならないものを、生乾きで取り出して使うものだという認識だった。
今回、家事合理化の観点で洗濯乾燥機の購入を検討した時も、かなり否定的な気持ちで調査を始めたのだった。しかし主要メーカーのWebサイトを見て、速やかに考えを変えた。東芝と松下が「ヒートポンプ式」の洗濯乾燥機を出しているのを知ったからである。理系の基礎的トレーニングを受けた人であれば、この言葉だけから、ただならぬ技術革新の可能性を直ちに感じることだろう。
熱力学的に正しい意味にこのヒートポンプという用語が使われているとすれば、それが意味するのは、この新型乾燥機が、ドライヤーかけまくり式の乱暴な設計ではなく、除湿機を基本とし、水の気化熱なども考慮に入れて、熱と、電気的・力学的エネルギーの絡み合いを理解した上で設計されたことを意味する。実装の問題も非常に難しかったはずだ。エアコンを室外機含めて丸ごと洗濯機の中に入れているようなものであり、しかも、ドラム式洗濯機に付きものの制振の課題を高水準で解決しなければならない。大げさながら、ついに日本の家電メーカーの技術者はそこまでできるようになった、などと感銘を受けながらカタログをめくったものである。
と、ここまで書いたところで、松下の技術者による解説を発見した。
(パナソニック社のWebサイトの画像を転載)
すべてはここに書いてある通りで、この乾燥機は、過去の方式の欠点のほとんどすべてを克服している。部屋の温度や湿度が上がることはないし、靴下などもほとんど痛まない。その上、洗濯においても改善は顕著で、我が家で使っていた(旧式の)縦型全自動洗濯機に比べ、体感的には、使用水量は1/4くらい、洗剤使用量は半分くらい、汚れ落ちは5割増しくらいである。容量が増えたのもうれしい。
現実的な使い方としては、乾燥に切り替わったなと思ったら一度止め(任意のタイミングで一時停止できる)、バスタオルやズボンなど大きなもの、シャツなどのシワになりやすいものは取り出し、半乾きのまま吊るし干しにするのが良いだろう。たとえば子供が小さい家庭など、洗濯点数が多い家庭では、細かいものをそのまま乾燥まで回すだけでも物干しと取り込みの手間は8割方減り、巨大な労力削減になる。
本洗濯乾燥機についての非常に完成度の高いレビューが家電Watchにある(その1、その2、その3)。これと、パナソニック社の解説を合わせれば、大体のことがわかるはずである。最上位機種には、除菌・脱臭・洗濯槽のカビ防止に使える「ナノイー」という機能がついている。この機能を抜いた下位機種も3万円程度の価格差で用意されており、好み次第だ。「ナノイー」なるものの素性はまだよく理解していないが、コートやジャケットのにおい取りには実際使える。さっと除菌してまた明日、というのは精神衛生上よいので、個人的にはよく使っている。
他社製品との比較については、最新機種ではないが、日経トレンディ誌2009年1月号が詳しい。スペック上は、パナソニック、東芝、日立の3社が頭ひとつ抜けている。店頭で見た限りは、アイロン機能を備え、しかもホコリ取りフィルタが本体前面から引き出せる点で日立製がよさそうに思えたが、パナソニック製に比べて幅が数cm大きいのが我が家の場合致命的だった。東芝製はパナソニック製とよく似ているように思ったが、日経トレンディ誌2009年1月号で、生乾きのまま終了となった、とのレポートを見て避けることにした。
実売18万円くらいで若干値は張るが、洗濯物が多い家庭では絶対買いだと保障しよう。なお、縦型洗濯機より床面積が大きくなるので設置場所には細心の注意が必要である。大手の家電量販店なら、無料で設置場所のチェックをやっているようなので利用したい(この意味で通販だと若干不安かもしれない)。
価格.comの該当ページへのリンク
0 件のコメント:
コメントを投稿