米国のホテルに滞在したことのある人は、風呂の使いにくさに頭を抱えたことだろう。圧力バランス弁(pressure balanced valve)というらしいが、最初に水が出て、反時計回りに回しきると熱いお湯が出てくるタイプのシャワー用ハンドル(下写真: American Standard社のWebサイトより)がほぼ全てのホテルで標準である。湯と水のハンドルが分離されてない。これはいくつかの点で日本人には非常に抵抗がある。
おそらく、違和感の根本は、湯を「いきなり」身体に当てるという点にあるのだと思う。シャワーヘッドは高い位置に固定されているので、蛇口から出るお湯をシャワーに切り替えた瞬間、頭上から水が降ってくる。日本式のホースの付いたシャワーであれば、普通の人はまずは手でお湯を受け、温度を確かめてから腕や脚などにお湯をかけつつ、胴体にお湯をかける。頭にいきなりお湯を当てる、というのは、真夏の行水でもなければ、日本人の入浴文化にはなじみが薄い気がする。

日本の場合、水と湯が分離した2つのハンドルが備えられていて、当然だが、湯の蛇口からは熱湯が出る。水と湯を混ぜることで好みの温度にする。熱湯が出る可能性があるのは確かに危険なのだが、シャワーヘッドは固定されているわけではないので、当然、シャワーヘッドを手で持ち、自分で安全を確認してシャワーを使うことが想定されている。つまり、システム上は最適化されていないのだが、各人がマニュアルで最適化するわけである。
対してアメリカでは、人間による最適化が基本想定されておらず、水から始まり湯にいたる特殊な弁が使われている。Wikipediaによれば、よそで水を使っていて水道管内の圧力が変化した場合でも湯温が変わらないようにするためらしい。つまりアメリカでは、どんながさつな人間でも火傷をすることがないように、システム側で最適化しているわけである。このあたりは、日米の設計思想の違いを明示していて興味深い。
さて、固定シャワーヘッドから降ってくる水による「いきなり」感を減らすだけなら簡単である。ホースつきのシャワーヘッドに換装すればいいだけである。アメリカのホームセンターでも、Handheld shower head(手持ち式のシャワーヘッド)が豊富に扱われていることからすれば、徐々に普及しているのかもしれない。
ただ問題は、一般にシャワーヘッドの取り付け位置が高すぎて、背丈の小さい人や子供には使いにくいということだ。片手でシャワーを持っている時はいいのだが、両手を自由にして湯を浴びたい時は、はるか上空からお湯が落ちてくる感じになる。それに、代替のシャワーヘッドのほとんどはプラスチック製の安物で、簡単に水漏れを起こしたりする。小さな子供がいる場合、ホースを引っ張ったりぶら下がったりしがちであり、この観点からも耐久性に問題が生じる。さらに、実際のところ、ホームセンターで売っている程度の20ドルくらいのシャワーヘッドだと、ホースの材質が固すぎて、シャワーヘッドの方向が自由に変えられないということが起きる。
この新たな課題を何とかする方法を考えていたのだが、冒頭の写真のWaterpikという会社の、蛇腹つきシャワーヘッドはよい感じだ。50センチ近い長さの金属製の蛇腹がついているので、自由に方向を変えて固定できる。「冷たい水がお湯に変わるまで待っている」間は、単に、水を壁の方向に向けておけばいい。腰の部分にお湯を当てる、などの制御も簡単だ。その上、ホースがないので水漏れの余地も少ないし、見栄えもよい。小学生が使うには位置がやや高すぎるが、それでも風呂椅子等を使えば、たいていは手が届くはずだ。
これを使っていて、違和感の由来がもうひとつあったことに気づいた。高い位置から降ってくるシャワーだと、どうも湯が散る感じがして、水量に対しての満足度のようなものが低かった。シャワーヘッドの位置を身体に近づけることで、この違和感もなくなった。米国製シャワーの簡素な構造による利点を生かしつつ、使い手の側での最適化に可能になった。小さな例ではあるがこういうことはいろいろ他にもあるに違いない。
Waterpik NML-603(S) Linea 6-Mode Showerhead with OptiFLOW, Chrome
0 件のコメント:
コメントを投稿