当然電気自動車も検討対象に挙がりました。テスラのウェブサイトに行くとアメリカで人気のあるコンパクトSUVの Model Y が、34,000ドルなどと書いており、一時期はこの2倍くらいだった記憶もあるので、お、と一瞬思ったのですが、これは連邦および州からの税金控除による 8,000 ドルと、不要になるであろうガソリン代 6,000ドルを含んだ額で、実は支払額自体は 48,000ドル。高級車であることには変わりありません。
このガソリン代の差額 6,000ドルがどうも大きすぎる気がしたので、どういう計算なのかと調べてみると、結構意外なことが分かりました。結論から言えば、アメリカの主要都市圏(ニューヨーク、ボストン、ロサンゼルス、サンフランシスコなど)では、燃費面から見た電気自動車の経済的利得はほぼないということです。これまで燃費は電気自動車が圧倒的に有利、という宣伝が当たり前のようになされてきましたが、事実と違うということです。あとは、充電にまつわる不利益・高い車両価格と、排気ガスを出さないという利益をどう比較するかという話になるかと思いますが、私の結論は、上記都市部に住む人の最適解はハイブリッド車である、というものです。
話を戻して、テスラの計算根拠を見てみましょう。この矛盾が起こる原因は、ガソリン代と電気代(上のスクリーンショット参照)が実勢値を反映していないということです。テスラのウェブサイトでは、NY州の節税額を計算に入れながら、NY州ではなく全米平均の電気代を使うというおかしなことをしています。主要都市部での電気代とガソリン代は米国労働省のページから参照できます。それによるとニューヨークは204年7月の平均で 0.288ドル/kWh です(全米平均は 0.178)。電気代には supply charge と delivery charge、それに system charge という3つがあり、私の住んでいるところでは delivery chargeがとても高く、合計で 0.31ドルくらいでした。つまりテスラは、私の地域での実勢値の半分くらいの値を使っているということです。NY市内の充電ステーションを使った場合さらに高く、0.5ドル/kWhくらいになるようです。
一方、ガソリン代ですが、これは近所では 1ガロン当たり3.5ドルくらい。テスラの見積もりは高すぎ、つまり、電気代は極端に安く、ガソリン代は妙に高く、電気自動車に大変有利な計算をしていることが分かります。そもそも、電気自動車と比べるべきは、内燃機関車の中での最善の選択肢であるハイブリッド車でしょう。
では、これらの数値(電気代 0.3 ドル/kWHh、ガソリン代 3.5 ドル/ガロン)を入れて、年間10,000マイル走る前提で年間のコストを計算したらどうなるでしょうか。
米国環境省が、fueleconomy.gov という燃費比較の便利なサイトを公開しています。もちろん車種によって燃費も違うので、ここではテスラモデルY、RAV4 ハイブリッド、カローラハイブリッドの3つを比べてみます。結果は下記のとおりです(直リンク)。
枠で囲まれた数字はいわゆるMPG (miles per gallon)で、アメリカにおける燃費の指標です。電気自動車の場合は MPGe と言って、ガソリンに換算した値が出ていますが、これはエネルギーの観点での等価値で、コストは無関係。したがって電気自動車に関してはほぼ無意味な値です。