2009年11月15日日曜日

「鍵開けマニュアル 増補版」


ディスクシリンダー錠のピッキング方法を図と写真で非常に詳しく解説したあぶない本。ピッキングツールの現物写真などもある。

詳細はマニアにしか興味はないだろうが、重要なメッセージは、シリンダー錠と呼ばれるクラスの鍵は、この本に書かれているような方法で(1週間くらい練習すれば)容易に開錠可能であり、この意味で、犯罪者にとって何のハードルにもなっていない、という事実である。

日本の錠前業界は美和ロックという会社が圧倒的なシェアを占めており、つい最近まで、マンションのドアの鍵はほぼ「MIWA」と刻印されたピンタンブラー錠であった。美和社はそのシェアを背景に、扉への取り付け規格を決める力を持っているらしい(p.214)。ちょうどMicrosoft Outlookを標的にしたコンピュータウィルスが流行したのと同様、MIWA社のピンタンブラー錠の脆弱性に目をつけた悪人がいて、2000年からの1-2年に集中的に都市部のマンションはピッキングの被害をこうむったのだった。

実は私もピッキング被害者である。まさしくこのMIWA社のピンタンブラー錠がついたマンションに住んでいて、出入り口は通りから丸見えの明るい場所だったのでまさかと思ったのだが、難なくピッキングされた。幸い保険が有効で、ノートパソコンなどの盗難物は一応それで弁償されたのだが、心理的ダメージは大きかった。一応警察にきてもらったのだが、指紋や足跡の痕跡を調べる警察の捜査もどこかおざなりで、検挙などあきらめているかのようであった。

まあそれも仕方ないことで、この頃、中国の「ピッキング学校」のようなところで訓練を受けた中国人が大挙して出稼ぎに来ていたのであった。平成14年警察白書はこのように述べている。
侵入盗の中でも、この1、2年で急に目立つようになったのがピッキング用具を使用したものである。12年中は、約2万9,000件のピッキング用具を使用した侵入盗を認知し、13年中は約1万9,000件と減少したものの、13年8月以降、再び増加傾向に転じている(図1-19)。また、検挙人員の約7割が中国人であり、組織的に犯行を重ねていた状況がうかがえる。
確定的な悪意を持った組織犯罪には、これまでの伝統的な捜査の方法は役に立たない。そのことを現場の警察官はよく知っていたのであろう。一時期は人権屋のロビー活動で止められていた入国時の指紋採取が再開されたのは慶賀の至りである。

ではわれわれはどうすべきなのだろう。本書の最後、第5章に、「新錠前の開錠」という章がある。それによれば、ディンプル錠のピッキングはほぼ不可能とのことである。
ディンプルキーとは、図6のような、小さなくぼみが複数あるカギのことですが、実際問題として、ディンプルキーを持つシリンダーに対して、「ピッキング」は有効な開錠手段ではないのです。(p.216)
ということで、錠前としてはディンプル錠をとりあえず採用し、サムターン回しなどの他の手法については個別に検討、というのがよさそうだ。とりあえず、警察庁の住まいる防犯110番とかいうページには目を通そう。


★★★☆☆ 鍵開けマニュアル
  • 鍵と錠の研究会 (著)
  • 単行本: 230ページ
  • 出版社: データハウス; 増補版版 (2002/08)
  • 発売日: 2002/08

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